ストラトのフロントとリアのハーフトーンを出す改造

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フェンダーのストラトキャスターというギターは世界でも最も広く使われているギターの一つであり、その音作りの幅広さは魅力的です。
3つのシングルコイルピックアップはネックよりのポジションからの出力とブリッジ側のポジションからの出力で大きく音色が異なります。
さらにそれぞれのピックアップは5点式のピックアップセレクターによりフロント+センター、フロント+リアのハーフトーンと呼ばれるミックストーンを出すことができます。

しかし、フロントとリアのハーフトーンも実は魅力的な音色であることはあまり知られていないかもしれません。この音色は少しジャガーにも似ているのですが、歪ませるとフロントのような暖かみとリアのような芯が共存したもので、クリーンもとても使える音色です。

フロントとリアのピックアップのパラレル(並列)接続の音と言えばピンク・フロイド(Pink Ployd)のデイヴィッド・ギルモアのストラトの音が最も有名だと思われます。ギルモアはフロントも多用しますが、要所要所でフロントとリアのハーフトーンを利用しています。ギルモアモデルのフェンダーカスタムショップのギターを見ればわかるように、センターとリアのピックアップポジション時にフロントの音をミックスできるミニスイッチが増設されています。

http://www.fender.jp/davidgilmour/

テレキャスターも発売当初からフロントとリアのピックアップのミックスが出せるようなレバーとなっていますが、すぐに設計者であるレオ・フェンダーはミックスを廃止し、フロントのプリセットトーン、フロント、リアという3回路のセレクターに変更しています。
この音色が好きではなかったのでしょうね。

しかし、機材は設計者の意図を超えて一人歩きすることはよくあることです。
RolandのSDD320というディメンションのボタン同時押しなども、設計者からしたら暴挙なのでしょうが、ポテンシャルを最大限活かすことができるのは設計者だけとは限らないはずです。
ミュージシャン、アーティストが機材に独自の道を切り開いてくれることはよくあると思います。
設計者がその機材の全てを理解しているというのは幻想だと思います。
意味は後からついてくるというのはよくあることです。

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今回の改造は外観上はセンターのトーンポットをプッシュプル式のスイッチポットに変えるだけなので、大きな変化はありません。
しかし、音には大きな変化が生まれます。

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スイッチポットを引っ張ったときにピックアップセレクターがフロントの場合、フロントとリアのハーフトーンが出ます。
セレクターをセンターにすると3つのピックアップすべての音がミックスされます。
セレクターがリアにあるときはトーンをバイパスしてフロントとリアのハーフトーンが出力されます。

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スイッチポットを押した場合は通常の3シングルのストラトと同じようにセレクターは機能します。

今回の改造で、ついでにコンデンサーを耐圧600Vの0.047μFのオレンジドロップに交換しています。コンデンサーは静電容量で選ばれることが多いですが、実は耐圧も重要なファクターで、高いほど音が太い傾向があります。
ストラトのトーン回路は通常フロントとセンターにしか配線されていないのですが、これはトーンを全開にした状態でも少し電気がトーン回路を通過してしまうことにより、少し音が柔らかくなってしまうため、リアには適していないという判断からの設計だと思います。
このような事情で、若干ながらコンデンサーを変えただけでもフロントとセンターの音色は変わります。もちろん、トーンを絞ったときの音色はコンデンサーによって大きく変わります。
丁度、変化するイコライザーの周波数の山の起伏が違うようなイメージです。

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この70年代後期のストラトは最もピックアップのコイルのターン数が少ない時期だそうです。
確かにテキサススペシャル、vanandtのTrue Vintageと比較すると音がクリアーでハイファイです。
ボディーがホワイトアッシュなこともあって、サスティーンが長く、高音は繊細な高音域が再現できて、低音側はしまった感じで、どちらかと言えばドンシャリ傾向な音色です。
このことが逆に王道のロックのギターから見ると異端なようですが、これはこれで選択肢としてありな音だと思います。

配線の改造には以下の本を参考にしました。

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竹田 豊

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